原則論からしますと、先ず業務上災害として使用者に療養補償義務が生ずることになります。
※犬に噛まれた原因が、「業務起因性に対する反証」にある私的行為・恣意的行為等であれば業務起因性がなくなります。
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。
使用者の災害補償義務は労災保険給付を受けた部分で免責となります。
しかし、この場合、加害者が飼い犬ですので訪問先の所有物により被った災害となり第三者行為災害に該当します。
政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
第2項 前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。
使用者は、労災保険給付の対象外の部分(物的損害・休業3日までの休業損害等)については、第三者への損害賠償請求を有しますが、
労災保険給付を受けた部分については、労災保険が損害賠償請求権を有することになります。
一部の配達業者では、犬に噛まれた配達員とその上司が犬の所有者を直接訪問し自費診療による治療費を請求するケースがあるようです。
先ず先方には、業務災害であることを確認し、災害補償義務は使用者にがあり、労災保険で保険給付を受けてもらようお伝え下さい。
診療費については公的医療保険に準じた額で計算され、労働基準監督署から過失相殺割合に応じた請求が来ることになります。
労働基準監督署の過失相殺割合に不満であれば異議を唱えて下さい。
できれば飼い犬が訪問者を噛まないような対策を講じておくとが何よりです。