マイカー通勤している被災労働者は、通常の通勤経路を出勤する途中、前方の乗用車が道路の中央で、後部車輪が雪に埋まって動けなくなっているので、追い越して通行することができず、また、代替する道もないので車から降りて前車を救出することとなった。そこで、前車に乗っていた男2人とともに、その車の後部バンパーに手を掛けて持ち上げたところ、右下アキレス腱を痛めたものである。
なお、道路の幅員は4メートルくらいあるが、両側に降雪した雪が積まれていて、車の通れる道路は2メートルくらいであった。
本件の場合、当該労働者は、就業のため自宅を出発し、合理的名経路及び方法による出勤の途中であったことは明らかであり、また、除雪により狭くなっていた道を通行不能車がさえぎっているため、運行が不可能となっていたこと及び他に代替する道路もないという状況において、通勤をするためには、当然進行の妨げとなっている運行不能車を救助しなければならいないことから、当該労働者の行為を単に善意に基づく行為とすべきではなく、むしろ通勤に通常伴う合理的な行為と解するのが妥当である。