【業務上の事由】

業務上の事由とは

『業務遂行性が証明され、業務起因性に対する反証がない場合には、業務起因性を認めることが経験法則に反しない限り、一般の業務上の災害と認められる。』とされています。

業務遂行性

傷病の原因となった労働者の行為が、業務の範囲であるかということ。

判断の基準としては、事業主の支配下・管理下であるかで判断します。

支配下とは業務の指揮命令を受ける状況であり、管理下とは事業主の施設や車両等の元にある状態を言います。

 

業務遂行性の具体的内容は、次の3つに大別されます。

①事業主の支配下であり、管理下で業務に従事している場合

業務及び付随する生理的行為、準備・始末行為、必要行為、緊急行為。

②事業主の支配下であり管理下であるが業務に従事していない場合

休憩時間等、事業所施設内での自由行動。

③事業主の支配下であるが、管理下を離れて業務に従事している場合

出張・外出用務・旅客運送等での運行業務及び付随業務。

この類型に基づいて判断されますが、当てはまらないからといって業務遂行性が否定されるものでもありません。

業務起因性

これは、労働者の傷病と業務との間の因果関係のことで

「その業務に従事していなければ、その傷病が生じなかった」という条件関係が業務起因性と言うことになります。

疾病の場合、業務起因性として業務の性質から有害因子との因果関係を判断しますが、

脳・心臓疾患においては、業務の量として発症前の一定期間における「過重労働」が因果関係として認められています。

平成13年12月「脳・心臓疾患の認定基準の改正」では、長期間の過重業務評価期間を概ね6箇月としています。

労災保険に代わる制度が定められている適用除外事業及び任意適用事業を除いては、

労働者を使用する事業は全て労災保険の適用を受けます。

疾病においては、業務と疾病の因果関係が医学的に証明されていることが必要で、

同業種や同職種での発症状況なども認定基準の一つとなります。

反証

反証には、次のような事由があります。

①業務逸脱行為、業務離脱行為、恣意的行為

②私的事由(私的行為、自己又は他人の故意)

③天災事変等の自然現象※1.

④局外的な事象

過去の業務上認定では、①を除いて事業主の管理施設や車両などと競合しているときは、

傷病と災害の間の相当因果関係によって認められており反証に該当するからといって業務外とは必ずしも言えません。

また、入社前に持病があるような場合は②私的事由に該当しますが、入社前と比較して持病の程度が悪化し、

その悪化と業務に因果関係が認められれば業務災害と認められる場合もあり得ます。

複数業務要因災害

1つの事業場のみでは労災認定されない場合は、複数の事業場の業務上の負荷(労働時間やストレス等)を総合的に評価して、労災認定の判断をするようになりました。

主に、過重労働等による脳・心臓疾患や精神障害などの傷病が対象となります。

地震に際して発生した災害の業務上外について

労災保険における業務災害とは、労働者が事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験法則上認められる場合をいい、いわゆる天災地変による災害の場合にはたとえ業務遂行中に発生したものであっても、一般的に業務起因性は認められない。
ただし、天災地変については不可抗力的に発生するものであって、その危険性については事業主の支配、管理下にあるか否かに関係なく等しくその危険があるといえ、個々の事業主に災害発生の責任を帰することは困難だからである。
しかしながら、被災労働者の業務の性質や内容、作業条件や作業環境あるいは事業場施設の状況などからみて、かかる天災地変に際して災害を被りやすい事情にある場合には天災地変による災害の危険は、同時に業務に伴う危険(又は、事業主支配下にあることに伴う危険)としての性質も帯びていることになる。
したがって、天災地変に際して発生した災害も同時に災害を被りやすい業務上の事情(業務に伴う危険)があり、それが天災地変を契機として現実化したものと認められる場合に限り、かかる災害について業務起因性を認めることができるものである。
前述の業務起因性の反証事由としての「天災地変による」の取り扱いを、単に天災地変に際して発生したことのみをもって解し取り扱うべきでないことはいうまでもない。

「よくある質問」も参照して下さい。