休業(補償)給付※を受けている労働者が、療養開始後1年6ヶ月経過しても治癒せず、一定の障害状態にある場合には、
労働基準監督署長の職権で休業(補償)給付に換えて「傷病(補償)年金」を支給するものです。
以下の要件を満たす場合に、労働基準監督署長の職権により支給されます。
(1)業務上又は通勤による負傷や疾病による療養開始後1年6ヶ月を経過している。
(2)その負傷や疾病が治っていない。
(3)その負傷や疾病による障害の程度が傷病等級表の傷病等級に該当すること。
※必ずしも休業(補償)給付を受けていることが法律上の支給要件とはされていません。
傷病等級に応じて、傷病(補償)年金、傷病特別支給金及び傷病特別年金が支給されます。
傷病等級 | 傷病(補償)年金 | 傷病特別支給金(一時金) | 傷病特別年金 |
第1級 | 給付基礎日額の313日分 | 1,140,000円 | 算定基礎日額の313日分 |
第2級 | 給付基礎日額の277日分 | 1,070,000円 | 算定基礎日額の277日分 |
第3級 | 給付基礎日額の245日分 | 1,000,000円 | 算定基礎日額の245日分 |
傷病(補償)年金は、支給決定の翌月分から、2、4、6、8、10、12月の6期に前2月分が支払われます。
傷病(補償)年金の支給決定により、休業(補償)給付は支給されなくなります。
同一の事由により労災保険から年金が支給されるときは、労災保険の年金に次表の率を乗じた金額に減額されます。
労災\社会保険 | 障害厚生年金のみ | 障害基礎年金のみ | 障害厚生年金と障害基礎年金 |
傷病(補償)年金 | 0.86 | 0.88 | 0.73 |
前述の通り、労働基準監督署長の職権により支給されますので請求手続きはありません。
療養開始後1年6ヶ月経過しても傷病が治っていないときは、経過後1ヶ月以内に
傷病の状態等に関する届 | 様式第16号の2 | 所轄の労働基準監督署長へ |
※①個人番号カード、②通知カード、個人番号付き住民票+免許証、パスポートをご用意下さい。
を提出しなければなりません。(労働基準監督署から案内がきます)
また、療養開始後1年6ヶ月経過しても傷病(補償)年金の支給要件を満たしていない場合は、
傷病の状態等に関する報告書 | 様式第16号の11 | 所轄の労働基準監督署長へ |
を毎年1月の休業(補償)給付請求時に併せて提出しなければなりません。(労働基準監督署から案内がきます)
傷病等級 | 給付の内容 | 障 害 の 状 態 | |
第1級 | 当該障害の状態が継続している期間1年につき 給付基礎日額の313日分 |
(1) | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を有し常に介護を要するもの |
(2) | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し常に介護を要するもの | ||
(3) | 両眼が失明しているもの | ||
(4) | そしゃく及び言語の機能を廃しているもの | ||
(5) | 両上肢をひじ関節以上で失ったもの | ||
(6) | 両上肢の用を全廃しているもの | ||
(7) | 両下肢をひざ関節以上で失ったもの | ||
(8) | 両下肢の用を全廃しているもの両下肢の用を全廃しているもの | ||
(9) | 前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの | ||
第2級 | 同 277日分 | (1) | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を有し、随時介護を要するもの |
(2) | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し随時介護を要するもの | ||
(3) | 両眼の視力が0.02以下になっているもの | ||
(4) | 両上肢を腕関節以上で失ったもの | ||
(5) | 両下肢を足関節以上で失ったもの | ||
(6) | 前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの | ||
第3級 | 同 245日分 | (1) | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を有し、常に労務に服することができないもの |
(2) | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、常に労務に服することができないもの | ||
(3) | 一眼が失明し他眼の視力が0.06以下になっているもの | ||
(4) | そしゃく又は言語の機能を廃しているもの | ||
(5) | 両手の手指の全部を失ったもの | ||
(6) | 第1号及び第2号に定めるもののほか常に労務に服することができないものその他前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの |
平均賃金に相当する額。業務上または通勤途上災害の発生した日又は、医師の診断によって疾病の発生が確定した日(直前の賃金締切日)の直前の3ヶ月間に支払われた賃金の総額をその期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額です。
休業(補償)給付の額の算定の基礎として用いる給付基礎日額は、傷病の発生時(スライドされた場合はスライド改定時)に比べて上下10%を超える賃金の変動があった場合、その変動率に応じて改定(スライド)され、また、療養開始後1年6か月を経過した場合は、年齢階層別の最低・最高限度額が適用されます(休業給付基礎日額)。
また、年金たる保険給付(傷病(補償)年金、障害(補償)年金及び遺族(補償)年金)の額の算定の基礎として用いる給付基礎日額については、傷病の発生時(スライドされた場合はスライド改定時)の属する年度とその前年度の賃金との変動率に応じて改定(スライド)され、年令階層別の最低・最高限度額の通用があります(年金給付基礎日額)。
なお、年齢階層別の最低・最高限度額は、年金が支給される最初の月から適用されます。
業務上又は通勤途上災害の発生した日以前1年間に その労働者に支払われた特別給与(ボーナスなど)の総額を算定基礎年額とし、それを365で割った額のことです。
特別給与の総額が給付基礎年額の20%以上のときは、20%が算定基礎年額となります。ただし、150万円が限度額です。
算定基礎年額<= 給付基礎日額×365×20% <= 150万円
なお、特別給与とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど3か月をこえる期間ごとに支払われる賃金をいい、臨時に支払われた賃金は含まれません。
第3項 傷病補償年金は、業務上負傷し、又は疾病にかかつた労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後一年六箇月を経過した日において次の各号のいずれにも該当するとき、又は同日後次の各号のいずれにも該当することとなつたときに、その状態が継続している間、当該労働者に対して支給する。
一 当該負傷又は疾病が治つていないこと。
二 当該負傷又は疾病による障害の程度が厚生労働省令で定める傷病等級に該当すること。
業務上負傷し、又は疾病にかかつた労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後三年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合又は同日後において傷病補償年金を受けることとなつた場合には、労働基準法第19条第1項 の規定の適用については、当該使用者は、それぞれ、当該三年を経過した日又は傷病補償年金を受けることとなつた日において、同法第81条 の規定により打切補償を支払つたものとみなす。
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
第2項 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
第2項 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。
第75条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。