【通勤の事由】

労働者災害補償保険法 第7条第2項(通勤)

前項第二号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。

一.住居就業の場所との間の往復

二.厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動

三.第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

就業に関し

通勤による往復行為が業務に就くため又は、業務を終えたことにより行われるものであることを意味します

例えば、昼休みを利用して住居との往復や早退等により帰宅する場合も該当します。

但し、業務予定がないのに私的事由で往復した場合は当然、該当しません。

また、通勤途上災害の原因が「通勤に通常伴う危険が具体化したもの」でなければならず、

持病の発作等によってまねいた事故で負傷したとしても通勤災害には該当しません。

合理的な経路及び方法

「合理的な経路」とは、必ずしも会社に届け出た経路に限らず通常考えられる経路も含まれ、通勤に付随する行為として

駅構内売店・トイレ・定期券購入なども含めて「合理的な経路」とされます。

子供を預ける託児所に寄る場合や交通渋滞回避の迂回もこれに含まれます。

「合理的な方法」とは、一般的に合理的な交通方法(徒歩含む)を言います。

ですから、会社にバス代を請求しながら徒歩で通勤している場合も合理的な方法として認められます。

一.住居と就業の場所との間の往復

「住居」とは

労働者が居住して日常生活している家屋などの場所をで、就業のための拠点となるところを言います。

通勤困難による単身赴任の場合は、

①毎週1回以上の反復・継続性が認められ

②就業場所との所要時間が片道3時間以内で200Km以内

であれば住居として取り扱われます。

ちなみに、集合住宅の場合は、不特定多数の方が往来できる場所までが経路上となり、オートロックより内側は住居となります。

「就業の場所」とは

労働者が業務を開始して終了する場所を言います。

「業務上の事由」で記していますように、「出張・外出用務・旅客運送等」は住居を出たところから業務と扱われるような場合は、

「業務の性質を有するもの」になります。

二.厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動

複数就業者の事業場間移動

事業場間の移動では、移動先の保険関係が適用されます。

※通勤災害保護制度の対象となる事業場間移動の起点たる就業の場所は、

労災保険適用事業場に係る就業の場所、特別加入者(個人タクシー業者等を除く。)に係る就業の場所等とすること。

三.第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動

単身赴任者の赴任先住居と帰省先住居の間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

通勤災害保護制度の対象となる住居間移動の要件は、

転任に伴い、当該転任の直前の住居から当該転任の直後の就業の場所に通勤することが困難になった労働者であって、

それぞれに掲げるやむを得ない事情により、同居していた配偶者、子又は要介護状態にある親族と

別居しているものにより行われるものとすること。

労働者災害補償保険法 第7条第3項(逸脱・中断)

労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第二号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

「経路を逸脱」

「逸脱」とは、通勤途中において就業又は通勤とは関係のない目的で「合理的な経路」から逸れることを言います。

「移動を中断」

「中断」とは、通勤の経路上において通勤とは関係のない行為を行うことを言います。

「日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるもの」

①日用品の購入その他これに準ずる行為。

②職業訓練校・学校(学校教育法第1条)で行われる教育やこれに準ずる職業能力開発向上に資するものを受ける行為。

③選挙権の行使その他これに準ずる行為。

④病院又は診療所において診療又は治療を受けることその他これに準ずる行為。

⑤要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母および兄弟姉妹の介護。

(継続的、又は反復して行われるものに限る)

原則として、合理的な通勤経路から外れた若しくは、通勤の移動に関係のない行為をした時点で通勤の逸脱・中段に該当し、

それ以後は通勤とは扱われません。

①から⑤については、例外として逸脱・中断し、その後通勤経路に復帰すれば復帰以後は通勤として扱われます。

もちろん、①から⑤の逸脱・中段の間は通勤とはなりません。